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老外汉学家的车轱辘话(17)迷上了中国的“大奥剧”《延禧攻略》

2019/02/26

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第17回  中国の大奥物ドラマ『延禧攻略』にはまってしまって

           

 藤井省三

                

 一昨年の小覧第11回「中国のネットデマとテレビドラマ」で、「私ももっと中国のテレビ・ドラマを見るべきだ・・・・ドラマが中国の現実をある程度反映しており、現代中国人の情念と論理を知るためには、文学や映画と並んで重要」と記した。そんなこともあり、この2年の人民大学と南京大学に滞在中には、夜は餃子などを宿舍に持ち帰り、動画サイトの愛奇芸でドラマを見ながら食べることにしている(その際には環境問題に留意して、残り物持ち帰り用のプラスチック箱を再利用しています)。

      

 こうして『好先生』(アメリカ修業中に親友と味覚を失った名シェフの物語)と『急診科医生』(アメリカ帰りの若い女医を主人公とする救命救急チームの物語)を断続的に延べ4カ月月かけて見終えた。どちらも全40数回で、全10回未満の日本のドラマと比べると大長編と称せよう。そして意外にも第3作目は清朝の乾隆帝の後宮を舞台とする『延禧攻略』となった――これまで私は、時代劇には時代考証もいい加減なものがある、という偏見を抱いていたのだが。

           

 昼食時には私は学食のテーブルで新聞を「ながら読み」しているのだが、昨年9月に偶然週刊新聞『南方周末』で同作主役俳優への長文インタビューを見かけた。翌日院生さんにこのドラマ、そんなに良くできているの?と聞いたところ、自分の友人ははまってしまって、週末には朝から晩まで見ていた、自分は中毒になるといけないので、見ないように心がけています、とのことだった。その夜、ちょっと見るだけ、と『延禧攻略』をダウンロードしたところ、私もはまってしまい、2カ月ほどの短期間、現代ものドラマの倍の速度で全70回の大長編を見終えてしまったのだ。ちなみに1回のドラマは45分である。

            

 日本でも1960年代以来、大奥ものと称される女性時代劇の映画・ドラマが製作されている。大奥とは江戸時代(1603-1867)の江戸城の御殿の一部で、徳川幕府の主宰者である将軍と将軍の世子および大御所(隠居した元将軍)の妻と側室の住居のことである。大奥もの映画はエッチなものが多く、ドラマは女たちの権力闘争を描くことが多いというが、私自身は子供の頃にドラマを少し見た程度である。

          

 日本の大奥ものも知らず、清朝の歴史にも不詳の私には、中国の女性時代劇ドラマ(“宮闘劇”と称される)を語る資格はないのだが、ひと言だけ感想を述べてみたい。

             

 まずはあらすじを紹介しよう。

           

 乾隆6年(1741)、若き魏瓔珞(ウェイ・インルオ、ぎようらく)は長姉の死の真相を探るため、紫禁城の刺繍係の宮女となり、内偵捜査により姉の死は乾隆帝の弟で放縦な弘昼らと関係があることを突き止め、彼女を愛する御前侍衛で富察皇后の弟の富察·傅恒らの助けも得て、復讐を始める。富察皇后は自由奔放な魏瓔珞の性格を愛して、自分の側近女官として彼女を抜擢し、礼儀作法や琴棋書画を教え、寛容であれと諭し、魏瓔珞から母と慕われるが、皇后の幼子は貴妃らの権力闘争の犠牲となり、皇后自身も自殺に追い込まれてしまう。魏瓔珞は持ち前の知力と度胸と美貌、そして皇后より授かった教養を武器に、権謀術数が渦巻く紫禁城で巧みに出世しつつ、皇后と姉と二人の同僚宮女のために数々の復讐(ふくしゅう)を成し遂げ、遂には富察皇后の遺嘱(いしょく)通りに新しい皇后となって、乾隆帝が明君となるのを輔佐(ふさ)するのであった。

             

 紫禁城とは清朝の宮殿で、現在の故宮であり、巨大な敷地は厳重に警備されていた。その72万平米という面積は、東大本郷地区キャンパス56万平米よりも大きい。この巨大な密室で、ライバルを陥れるための盗難事件から、皇族による宮女レイプ殺人事件や皇太子怪死事件が次々と生じ、これを魏瓔珞が推理捜査し、時には心理作戦で真犯人を誘き出していく――この探偵ドラマの要素が『延禧攻略』の第一の見どころであり、この点では魏瓔珞は正真正銘のヒロインである。

               

 ところが魏瓔珞は出世し乾隆帝の貴妃となっても成熟することなく、名探偵にあらざる時にはいたずら娘である。この役を女優の呉謹言が凛々しくかつ愛らしく演じてはいるのだが、それと比べても富察皇后はその知性・気品・美貌・慈愛の情において魏瓔珞を凌ぎ、まさに物語のヒロインとして描かれている。しかし途中で元側近女官で皇后の弟傅恒に嫁した爾晴の背信行為に衝撃を受けて自殺してしまうのであった。私はこの場面を見ていて、今後は物語が成り立つのだろうか、と思わず心配したほどである。その後、着々と亡き皇后のための復讐を進める魏瓔珞の背後に、視聴者は皇后の霊を見続けることになる――この2人のヒロインの母娘愛や姉妹愛にも似た関係が『延禧攻略』の第2の見どころである。

         

 魏瓔珞の活躍により、名門出身にして知性・気品・美貌を備えながら、残忍極まる権謀術数を駆使する貴妃たちが破れ去っていく場面は壮快ではある。この貴妃たちの愛欲のための闘いが第三の見どころではあるのだが、勧善懲悪の繰り返しを見ている内に、私は次第にこの悪女たちに対する同情を禁じ得なくなってきた。

               

 一族の利益を図る閨閥(けいばつ)形成のため、父や兄弟たちにより紫禁城に送り込まれてきた貴妃たちは行動の自由はおろか、私有財産処理の自由さえも制限され、多くのライバルと競合しながら皇帝の寵愛を得て男児を産み、息子を世継ぎにすることが唯一の希望なのである。信頼できるのは側近女官のみであるが、それもほかの貴妃により謀殺されたり女官自身が謀反を企むこともある。この巨大な密室における高圧力の人間関係に、彼女たちが良識や良心を失い、残酷な陰謀を企てるに至る点には大いに同情の余地があろう。

              

 そして最大の問題は、臣民の幸福のために激務をこなす聡明にして精力絶倫なる皇帝が、このような紫禁城の不条理を一顧だにせぬことである。いかに文武両道のイケメン明君であろうと、富察皇后は彼を頂点とする巨大密室の不条理に絶望して自殺したのであろう。そしていかに魏瓔珞が名探偵であろうと、常勝の彼女には却ってこの紫禁城の秘密を解くことはできず、富察皇后の身を挺しての抗議も十分には理解できないのであろう。

           

 ドラマ最終回は、新皇后に昇進してもなおも愛らしき魏瓔珞と、中年の魅力に溢れる皇帝とが抱擁しあう場面で終わるが、これはハッピーエンドに見えるいっぽうで、紫禁城システムに対する鋭い風刺にも見えるのではないか……私は全70回読破の喜びに浸りながら、こんなことまで考えさせてくれる『延禧攻略』は名作ドラマだな、と思った次第である。

                   

著者略歴

1952年生まれ。1982年東京大学大学院人文系研究科博士課程修了、1991年文学博士。1985年桜美林大学文学部助教授、1988年東京大学文学部助教授、1994年同教授、2018年退休、東京大学名誉教授。2005~14年日本学術会議会員に就任。専攻は現代中国語圏の文学と映画。主な著書に『中国語圏文学史』、『魯迅と日本文学――漱石・鷗外から清張・春樹まで』、『村上春樹のなかの中国』、『中国映画 百年を描く、百年を読む』など。

                                 

本文は著者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解を代表するものではありません。

  

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